ある女の一日
(チャララ~ララ チャラララララ~~ チャララ~ララ チャラララララ~)
(チャララ~ララ チャラララララ~~ チャララ~ララ チャラララララ~)
・・・・んん・・もう朝なの?
頑張って目覚ましを止めた。
あとちょっとだけ・・と目を閉じたが、窓をたたく雨音が「早く起きなさい」と言っているように聞こえ、女は仕方なく枕上のメガネを手探りで取ると、けだるそうに起き上がった。
「はぁ~っ・・・雨か・・・・少し寒いな」
寝室からキッチンへ直行し、冷蔵庫の扉を開く。
牛乳パックを取り出し、ミルクパンへゆっくり注いだ。
カチャッ・・・牛乳をを火にかけボォーっと見つめていると、鍋のふちからフツフツと小さな泡を立て湧きはじめる。
イエローにするかオリーブにするか迷って、イエローのマグカップに少し温まったくらいのミルクを注ぎ、ゆっくりと一口飲んだ。。。「落ち着く・・・」
さあ、今日も一日が始まる。
少し憂鬱な雨も長靴があるから気にしない!
温かいミルクを飲み終えた女はもう仕事モードに入っていた。
身支度を終え、長靴をはく。
車に乗り込み職場へ着くころには東の空がやや明るく、雨があがっていた。
(晴れるの? えっ? 聞いてないわよ?! 替えの靴、持ってきてないし)
女は今日一日は雨であればいいのに・・・と思った。
女の職場はちいさな雑貨屋で、毎日好きな音楽を選んでBGMを流す。
「今日は何にしようかな」
再生ボタンを押した。
(※△×☆※△■×☆・・・・・・・・・プップピドゥ~♪)
女はジャズが好きだ。
午後一時。スタッフの女の子が「おはようございます」と出勤してきた。
「おはよう! ちょっと聞いて!! こないださぁー、、、、、」
女のどうでもいいおしゃべりに、毎回付き合ってくれる優しい女の子には脱帽する。。。
気の済むまで喋った女は、「じゃあ、お昼休憩行ってきまーす!」と財布を小脇に店を出た。結構な雨量だ。(うん、結構結構!)
「お腹はあんまり空いてないけどな。。。おいしいコーヒー飲みたいな」
女はコーヒーに浮かぶクレマが好きである。
雨だというのに大学生の男の子が2人、玄関先で入るのをためらう様子を見せながら『蝶ネクタイがあると聞いて来ました』とご来店。
雨だというのに常連の色白で華奢なカワイイ女性が、『友達にプレゼントしたくて』とご来店。
今日も素敵な時間を過ごせた。
「お疲れ様!また明日もよろしくお願いしまーす!」
傘は差さず、水たまりを気にせず、足早に車に乗り込むと朝来た道を戻って女は家路に着いた。
「やっぱり今日は寒かったなぁ。寒い寒い。。。」女は独り言を言いながら濡れた長靴を玄関の隅へ立て、洗面所にかけてあるタオルで髪を拭いた。
(お腹すいた・・・)
昼間が軽い(女の割には)昼食だったせいか、こってりしたものが食べたかった。
ミートソースを冷凍していたことを思い出した。
(よし、パスタだ!チーズをたっぷりかけよう!何かスープも飲みたいあ)
冷蔵庫の野菜室にもう危なそうなかぼちゃを発見した。
(これだ!)
かぼちゃを適当に切りラップに包むと、電子レンジに入れダイヤルを回した。 数分後、「チーン」
「あちっ!」 湯気の立つかぼちゃをミキサーに落とし、水と少しのクリームを加え最後に少しの砂糖と塩コショウで味を調えた。味見をした女は小さくうなずくと、また朝のミルクパンで1人分のスープをコンロにかけた。
深いブラウンで手描きされた蓮の花のスープ皿は女の一番のお気に入りだ。
鮮やかなパンプキンスープが更においしそうに見える。(サラだけに)
安らげる家とやりがいのある仕事。優しい人間関係。
「幸」は人それぞれの価値観で違うのかもしれないが、女は一日を振り返り、今日も幸せだったと感謝をするのだった。
幸せが人から人へ伸びていきますように☆
「明日は晴れるかな・・・」
女はメガネを定位置に置き、テレビのタイマーを2時間にセットすると、部屋の明かりを消しベッドに横になった。。。。
ある雨女の一日。